『ドキュメント パナソニック人事抗争史』を読んだ。
なぜあいつが役員に?なぜあの男が社長なんだ?人事がおかしくなるとき、会社もおかしくなる。元役員たちの証言で名門・松下電器の裏面史がいま明らかに。
読んでいるとどんどん恐ろしくなってくる。非常に多くの社員や国というレベルで影響力をもつ企業のトップ人事の意思決定がウェットな感情で行われているとは。多くの資源を投下して生産される製品が顧客視点とは別の価値観で意思決定されているとは。
製品そのものは好きなものも多く、自宅には多くのパナソニック製品がある。ユーザーのことを見据えながら、グローバルな視点で経営されているのだろうというイメージを持っていたが、実態は想像を遥かに超えた、どろどろとした状況になっていたという。
デール・カーネギーの『人を動かす』で触れられているような、人に思い通りに動いてもらいたかったら他者の尊厳を保つようにせよ、といったセオリーは意識されていないように思える。他者を尊重することは、結局は自分の利になるということはロジックでもわかるような気がするのだけど、そもそも大企業のトップ層になるにそういったところに細かく気を使うよりも、強権を振るうようなタイプの方が向いていたりするのだろうか?
印象的だったのは、巻末の後書き。関係者にインタビューするなかで、当時の関係者が「ああ、そういうことだったのか」とこじれてしまった人間関係の背後に何があったのかに初めて気がつくことがままあったという。たしかにリアルタイムでどんな人間関係があり、どんな思惑が渦巻いているかを掴むことは非常に難しいことのように思える。
私の仕事はデザインだが、昨今ではただ単純に色やカタチをつくるだけではなく企業の事業のあり方なども考えながら支援をすることがある。そういった仕事の場合には、仕事の一環としてプロジェクトに関する利害関係者の整理を行うことがある。こういう企業経営においては、そのような利害関係者の把握や関係性の整理はどのようにおこなわれていたのだろう、そもそも行われていなかったのだろうか。
たらればの話をしても仕方がないのだけど、人の関係性やコミュニケーションを考えていく、改善していくところに新しいアプローチができていれば、働く人一人ひとりにとって、企業にとって、社会にとっていい影響を与えることができるかもしれないと思った。というか、少しでも自分ができることのフィールドに落とし込んで捉え直していかないと、暗い感情に囚われてしまう。
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